CLSAによるEL DORADOへの資本参加とPEファンドによるアジア展開支援のトレンド

6月21日、CLSAキャピタルパートナーズ(以降、CLSACP)はカラーコンタクトレンズ製造のEL DORADO(エルドラド)グループ(以降、エルドラド・グループ)への資本参加を発表した。CLSACPによるリリースによるとエルドラド・グループはカラーコンタクトレンズの企画・製造・販売を手がけており、また日本だけでなく、香港・中国をはじめとするアジア展開を行っているという。エルドラド・グループは主に若年女性層をターゲットとしたカラーコンタクトのブランドを複数有している。

CLSACPは香港を拠点として、中華圏含むアジアでのネットワークを強みとしつつ、日本特化型のファンドを有している。2017年8月に400百万ドル(480億円、1ドル120円前提)の3号ファンドの調達完了を発表したばかりであり、これが3号ファンドの最初の案件であると推察する。

なぜ創業者である藤原氏は数あるファンドの中からCLSAを売却先として選んだのだろうか?これは創造の域は超えないが、CLSACPはエルドラド・グループと同種の若年女性をターゲットとしていたマウジーなどのブランドを有していたバロック・ジャパンに投資し上場させており、その実績は藤原氏にとって安心感があったのではなかろうか?特に今回は、創業者である藤原氏はCLSAとの共同持株会社に再出資しており、その点から単純な売却よりも、事業を成長させる実績は藤原氏にとって「パートナー」となるPEファンドの選定には重要であったと言えよう。

加えて、CLSACPによるEL DORADOのアジア展開支援である。前述の通りCLSACPは香港を拠点としたアジアでのネットワークをゆうしており、これらを活用した支援が可能である。そしてこのアジア展開は最近のファンド出資に於けるトレンドにもなりつつある。2015年1月にロングリーチグループはブライダルリング専業のプリモ・ジャパンを買収したが、その時の支援内容としては「アジア市場でのプリモ・ジャパンの成長を支援する」というものであった。2016年9月にCVCが「おそうじ本舗」等のホームクリーニングや介護チェーンを運営する長谷川HDを買収した際にも、「東南アジアを中心に海外事業を拡大する」と発表していた。このように例を上げればキリがないほど、ファンドによる投資の目的として「アジア展開支援」はよく掲げられている。

ロングリーチは、プリモの「セミオーダースタイル」による確立されたビジネスモデルを基に、国内市場およ びアジア市場でのプリモのより一層の成長を支援していきたいと考えております。また、今回のプリモへの 投資は、特徴あるコンシューマー事業への投資と価値向上に注力するロングリーチの投資方針に一致し たものであり、今後、事業効率性の更なる向上および特にアジアを中心とした新規成長市場への進出を 含めた施策を検討してまいります。
出所:ニュースリリース

英ファンドCVC、「おそうじ本舗」の長谷川を買収 350億円
過当競争が続く国内介護サービスは業界再編の機運が高まっている。CVCは積極的なM&Aを仕掛け、長谷川ホールディングスの売上高を大幅に伸ばしたい考えだ。東南アジアを中心に海外での事業も拡大する。

出所:日本経済新聞

これはファンド側にとっても投資・出資を受ける企業側にとってもメリットのある方向性だろう。ファンドにとってみればリターンを出すためには事業を成長させることが最も近道であり、アジアへの展開によって成長ができれば望ましい。一方で企業側にとってもメリットが有る。多くの企業が海外展開し得るポテンシャルを有しているものの、そのための人材・脳は不足に直面している。このような企業にとってファンドからの出資を受けて、金銭だけでなくこれらの支援を受けることは大きな魅力であろう。

今後もこのような「アジア展開」「海外展開」を全面に出したファンド投資は増えていくと見る。そして実際にファンド傘下でアジア・海外で大きく事業を伸ばした企業が出てくれば、ファンドによる海外展開支援を期待したバイアウト案件は更に増えていくであろう。

PEO編集部

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