エンデバー・ユナイテッドー「再生」のイメージを弱め、より前向きな局面での投資も狙う

2013年創業と比較的新しいプライベート・エクイティ・ファンドである。しかしその実は、親会社が再生ファンドとして著名「フェニックス・キャピタル」なのである。

フェニックス・キャピタル

フェニックス・キャピタルは、現在のニュー・ホライゾン・キャピタル社長の安東氏が2002年に立ち上げた事業再生、ターンアラウンド型のPEファンドである。2002年はまさに大手銀行が大型の不良債権・経営支援先の処理に追われていた時期であり、フェニックス・キャピタルは銀行の経営支援先に対して、銀行から経営支援先への債権をディスカウントで買い取りDES(Debt-to-Equity-Swap、債務の株式化)を行ったり、経営支援先に対して優先株式などで出資を行い、資本構造を変革するとともに、事業のリストラクチャリングを実施するような案件を主に手がけていた。ファンドは東京三菱銀行(現在の三菱UFJ銀行)と関連が深く、ファンドの主なLP投資家としても東京三菱銀行の名前が挙げられている。フェニックス・キャピタルの投資方針などについてはこちらの安東氏のプレゼンテーションに詳しく説明されている。

フェニックス・キャピタルは今回エンデバー・ユナイテッドを子会社として設立した以降は新ファンドの設立・運営は行っていない様子であり、代表取締役の三村氏含めてファンドのメンバーはそのままエンデバー・ユナイテッドにシフトしたようだ。エンデバー・ユナイテッドのHPによると、フェニックス・キャピタル時代には、合計9ファンドを立ち上げ、約2,400億円を約40社に投資しているという。

フェニックス・キャピタルの代表的な投資案件:2004年の三菱自動車

その中でも最も著名な投資先が2004年に実施された三菱自動車普通株式への出資である。三菱グループを中心に3,000億円弱の優先株式へ投資(一部DES)する中、唯一普通株式を引き受けたのがフェニックス・キャピタルであった。2004年当時、三菱自動車はリコール隠しが発覚し、苦境に陥った。さらに追い打ちを掛けるように米国に於けるサブプライムオートローンの問題が生じ、大規模な資本増強が必要な状況にあった。その当時、独ダイムラーが筆頭株主であったが、ダイムラーは追加支援を拒否した。その結果、三菱グループを中心とした支援の枠組みとなった。銀行などの関連会社はすべて優先株での出資となる中で、唯一普通株式の出資となり、フェミックスキャピタルは三菱自動車の筆頭株主となった。その当時の状況は、現在はニューホライズン・キャピタルの社長となった安東氏がその当時の回顧録を2016年に寄稿している記事に詳しい。

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フェニックス・キャピタルからエンデバー・ユナイテッドへ

このように歴史のあるフェニックス・キャピタルからあえて子会社としてエンデバー・ユナイテッドを設立した理由は明確に語られていない。ただ以下の「より前向きな形で」という記述、そしてフェニックス・キャピタルが再生ファンドとして著名だったことを考慮すると、「再生ファンド」という位置づけを払拭し、成長企業も含めて投資をしていくという投資方針に変わったものと推察できる。

エンデバー・ユナイテッドは、フェニックス・キャピタルが蓄積してきた知見や経験を、より前向きな形で提供させていただくために設立された投資ファンドです。投資先企業の様々な経営課題に応じ、友好的かつ適切な形で資本を提供させていただくことで抜本的な解決を図り、役職員の皆様と共に汗を流して中長期的な企業価値の最大化を目指しております。(エンデバー・ユナイテッドHP)

エンデバー・ユナイテッドの投資先

2013年の設立以降、物流関連のジェイトップ、アパレルのパレモ、そして今週発表された日本ピザハットの3社に投資していると考えられる。アパレルのパレモは、ユニー62%保有していた上場企業であり、おそらくファミマHDによるユニー買収後のリストラの一環で売却されたのであろう。パレモは、以下の業績推移にある通り、過去5年間不採算店舗を整理するなどリストラを進めていた企業である。

売上高と経常利益
店舗数と従業員数
出所;パレモHP 出所;パレモHP

日本ピザハットについては、先の記事の通り、事業構造改革中の企業であった。これらの投資を見る限り、エンデバー・ユナイテッドもフェニックス・キャピタルの延長線であるだけに、やはり再生局面の投資に長けている、少なくともそのような投資がファンドとして「好き」なのだと思われる。

エンデバー・ユナイテッドの魅力

前述の通り、再生局面での投資は当ファンドの強みであるし、「好き」な投資スタイルなのであろう。ただ「過去の知見や経験をより前向きな形でご提供すべく、新ファンドの設立に併せて本格始動」(代表取締役の三村氏)という言葉からすると、成熟局面や成長局面の企業への投資も手がけていくものと思われる。そのような局面であっても、再生案件に対してハンズオンで取り組み事業再生を実現してきたエンデバー・ユナイテッドの強みは活かされるはずである。

ファンド基本データ

ファンド運営会社名
エンデバー・ユナイテッド株式会社
設立
2013年(2002年:前身のフェニックス・キャピタル設立)
ファンド規模(設立)
現行ファンド
エンデバー1号ファンド:227億円(2016/3)
過去ファンド
ファンド9本、2,400億円
主な投資先
エンデバーユナイテッド
日本ピザハット(ファーストフード、2017)
パレモ(アパレル、2016)
ジェイトップ(物流、2015)
旧フェニックス・キャピタル
合計約40社
ティアック(音響・情報機器、2005→2013)
三菱自動車(自動車製造、2004→2005)
東急建設(土木・建設工事、2003→2012)
代表者
三村 智彦
代表者経歴
三菱東京UFJ銀行にて、コーポレートバンキング、調査業務(通商産業省出向)、投資銀行業務(主に証券/ファンド関連業務)の企画等に従事。2002年当グループの設立に参画。フェニックス・キャピタルの投資担当取締役として投資業務全般を統括した後、2008年より代表取締役に就任。2014年からは日本リバイバル・インベストメンツの代表取締役も務める。
人員数
21名(2017/5時点、HPより)

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