5月24日、ソラストは東邦ホールディングス株式会社との業務提携を発表すると同時に、同時に主要株主であるカーライル(が保有するSPCであるCJP NP Holdings)による持ち分の売却を発表した。この同日に発表された2つの適時開示は関連している。カーライルは持ち分のうち約180万株を第3位株主の東邦ホールディングスに売却し、残りをクレディ・スイス証券を通じて市場売却することにより、保有分をすべて売却した。カーライルは本件取引により、ソラストへの投資を完了したことになる。
保有株数(千株)/ 比率
2017/3
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変化(千株)
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保有株数(千株)/ 比率
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大東建託
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10,601 / 36.44%
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–
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10,601 / 36.44%
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カーライル
(CJP NC Holdings)
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4,218 / 14.50%
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-1,822(東邦HD)
-2,400(市場売却)
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0 / 0%
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東邦ホールディングス
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1,413 / 4.86%
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3,236 / 10.65%
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なぜカーライルは今回このような組み合わせの形で売却したのだろうか?投資先が上場し、上場株式の持ち分を保有することになったPEファンドが保有分を売出しやブロックトレードで市場に売却するケースは多く見られるが、このように一部を事業会社に売却した上で、市場売却を行うケースは多くない。今回の売却に見て取れるのはカーライルによる投資先に対する「配慮」と短期的なリターンよりも長期的な「レピュテーション/評判」を重視する姿勢だ。
第1にカーライルは、本件売却がソラスト株価に及ぼす悪影響を最小化する意図があったとかんがえられる。売却前カーライルは約422万株・14.5%の発行済株式を保有していた。これだけの株式がすべて市場で売却された場合、一時的な株式の需給悪化を引き起こし、株価の急落を招き兼ねない。そこですべてを市場で売却するのではなく、東邦ホールディングスに売却しつつ、無理のない範囲での市場売却をクレディ・スイス証券経由で実施したと思われる。
また本件取引は、第3位株主であった東邦ホールディングスによる追加株式取得により、資本事業提携を具体化し、ソラストの事業成長に寄与したという側面もある。元々2015年11月にカーライル持ち分を東邦ホールディングスが取得した際に将来的な事業資本提携を締結することを発表していたが、そのような契約が結ばれていたという開示はこれまで無かった。今回、東邦ホールディングスの追加取得により、当社によるソラストへのコミットメントを高め、具体的な契約となったものと思われる。
この売却に見て取れるのは、カーライルとしてはこの14.5%の持ち分最大化という短期的なリターンのみを狙っているわけではない。目指しているのは自社が売却した後も事業が中長期的に成長し、株価も継続的に上昇することである。このような形で新たな成長事業を創造することがPEファンドの役割だと認識し、またそのような事例を増やしていくことが日本での新たな投資機会につながると、カーライルは考えていると思われる。
そしてこのような考え方を有するPEファンドはカーライルだけではない。PEファンドは短期的な収益のみで行動していると誤解をされる傾向にあり、実際にはそのような判断基準で行動しているPEファンドもあるかもしれない。ただ多くのファンドは、個々の投資先のリターン最大化よりも、中長期的に日本で投資を成功させ、新たなファンドを運営していくための「レピュテーション」「評判」を非常に重視している。この点はPEファンドの投資活動を理解する上で重要なポイントである。
PEO編集部
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