丸の内キャピタルによる「猫 X リサイクル」という成長分野への投資

2018年7月31日、丸の内キャピタルは第二号投資事業有限責任組合が 100%出資する特別目的会社を通じ、株式会社大貴 (以下、「大貴」という。)の全株式を譲り受けたことを発表した。大貴は、1984 年に設立され、主にペット用排泄材の一カテゴリーである紙製猫砂の製造販売に従事している。

丸の内キャピタルは三菱商事が85.1%、三菱UFJ銀行が14.9%出資する「三菱系」のPEファンドであり、ソーシングやバリューアップにおいて三菱商事を中心とする三菱グループとの連携する点に特徴がある。現在運用するファンドは2016年3月にファーストクローズした2号ファンドであり、2016年3月24日時点で500.2億円を集めている。そのうち500億円は三菱商事と三菱UFJ銀行がそれぞれ250億円づつ拠出しており、今後は外部投資家の資金を集めて1,000億円規模のファンドを目指す予定であるという。2号ファンドとしては株式会社とライス、株式会社伊勢丹三越フードサービスに次ぐ3番目の案件となる。

本件投資のキーワードは「猫」と「リサイクル」であり、高い成長が期待される市場である。丸の内キャピタルのニュースリリースにもある通り、猫はペット市場の中でも成長市場である。「ネコノミクス」という言葉に代表される。そのネコノミクスは日本だけにとどまらない。巨大な市場として中国におけるペットとしての猫需要の高まりがある。「パートナーや子供のいない30代前後はレジャーや自己鍛錬に忙しく、手のかからないネコに走る」(出所:日本経済新聞)と中国においても猫ブームが急速に広がっている。

大貴は製品である紙製猫砂を製造する原材料として、従来は廃棄されていた規格外の紙おむつや衛生用紙を原料として使用している。当然これにより原材料費は抑制されるため、低価格での製造が可能になるという経済的恩恵はある。ただこの所謂「リサイクル」を行うという事業の魅力は単に経済性にとどまらない。このように社会性の高い事業は、その社会性の高さ故に成長するという側面も多い。大貴の場合も、リサイクル製品であるということが消費者の需要喚起にもつながっていく。

PEファンドが投資を行う際には、成長のキーワードが明確なほうが望ましい。PEファンドは3−5年後を目処にM&Aによる売却もしくは上場により持ち分を売却していくが、その際には成長のストーリーを提示していく。本件の場合には環境フレンドリーなネコノミクス企業と位置づけ、上場や売却を目指していくのだろう。ある調査によると大貴の売上は20億円程度とそれほど大きな投資ではないものの、市場のポテンシャルを鑑みると、急成長する可能性を秘めた投資である。

大貴はベーシック・キャピタル・マネジメントというみずほ系のファンドが80%を保有していた。余談であるが、本件はP「青」のメガバンクグループ(みずほ系)から「赤」のメガバンクグループへの売却という形には印象的だ。無論、入札の結果に過ぎないが。

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