九州活性化ファンドによる三好食品工業への出資ー活性化ファンドに期待される役割

2018年8月10日、西日本シティ銀行(以降、NCB)は同行が出資先が運営するNCB九州活性化ファンド(以降、NCBF)が三好食品工業(本社:福岡県、代表取締役:三好兼治)の第三者割当増資を引き受けたことを発表した。三好食品工業は1979年創業で豆腐・油揚げ、大豆加工食品、こんにゃく及びその他の製造販売並び に輸入業に従事する企業である。NCBFが三好食品工業による4億円の優先株式の第三者割当増資を引き受ける形での投資となる。

NCBFは福岡県の地方銀行であるNCBが日本政策投資銀行(以降、DBJ)、地域経済活性化支援機構(以降、REVIC)、九州発のコンサルティング会社である株式会社ドーガンの出資により設立されたNCBキャピタルが運営するファンドである。

NCBキャピタル及びNCBFスキーム
出所:NCBニュースリリース

REVICは2009年に設立された企業再生支援機構を母体とし、現在では預金保険機構と農林中金という政府系金融機関のもとで、中小事業者の企業再生と地域の活性化支援を行う機関である。REVICは活性化ファンド事業として金融機関と共同で複数の地域ファンドの運営業務に従事しており、NCBFはその一つである。現在全国に42の地域活性化ファンドがある。

REVICによる地域活性化ファンドのリスト
4
観光活性化マザーファンド投資事業有限責任組合
地域ヘルスケア産業支援ファンド投資事業有限責任組合
地域中核企業活性化投資事業有限責任組合
トパーズ・プライベート・デット1号投資事業有限責任組合
4
青函活性化投資事業有限責任組合
いわて復興・成⻑支援投資事業有限責任組合
ふくしま復興・成⻑⽀援ファンド投資事業有限責任組合
みやぎ復興・地域活性化支援投資事業有限責任組合
関東地域
6
かながわ観光活性化投資事業有限責任組合
千葉・江戸優り佐原観光活性化投資事業有限責任組合
ぐんま医工連携活性化投資事業有限責任組合
いばらき商店街活性化投資事業有限責任組合
いばらき新産業創出ファンド投資事業有限責任組合
広域ちば地域活性化投資事業有限責任組合
6
ALL信州観光活性化投資事業有限責任組合
しずおか観光活性化投資事業有限責任組合
中部・北陸地域活性化投資事業有限責任組合
八十二地域産業グロースサポート投資事業有限責任組合
飛騨・高山さるぼぼ結ファンド投資事業有限責任組合
飛騨・高山さるぼぼ結ファンド2号投資事業有限責任組合
3
ふくい観光活性化投資事業有限責任組合
ふくい未来企業支援投資事業有限責任組合
中部・北陸地域活性化投資事業有限責任組合
5
やまと観光活性化投資事業有限責任組合
わかやま地域活性化投資事業有限責任組合
奈良県観光活性化投資事業有限責任組合[PDF/145KB]
SI地域創生ファンド投資事業有限責任組合
しがぎん成長戦略ファンド投資事業有限責任組合
4
高知県観光活性化投資事業有限責任組合
あわぎん地方創生投資事業有限責任組合
愛媛南予水産業創成投資事業有限責任組合
こうぎん地域協働投資事業有限責任組合
3
しまね大学発・産学連携投資事業有限責任組合
とっとり大学発・産学連携投資事業有限責任組合
トリプルアクセル成長支援ファンド投資事業有限責任組合
7
九州観光活性化投資事業有限責任組合
佐賀観光活性化投資事業有限責任組合第1号
NCB九州活性化投資事業有限責任組合
沖縄活性化投資事業有限責任組合
トリプルアクセル成長支援ファンド投資事業有限責任組合
九州広域復興支援投資事業有限責任組合
熊本地震事業再生支援投資事業有限責任組合
出所:REVICのHP

これらの地域活性化ファンドはむやみに設立されているわけではなく、以下の5つのテーマに沿った形で設立されている。

地域活性化ファンドのテーマ
関連する産業の裾野が広く地域アイデンティティが発揮される観光産業は、地域経済活性化の「キーコンテンツ」です。REVICはファンドを通して観光産業の事業者の「成長に向けた変化」を資金と人材の両面で支援します。
地域経済活性化のためには、地域経済を牽引する「地域中核企業」の成長が必要です。REVICは地域中核企業のためのファンドを通して、資金と経営支援人材を投入し、早期経営改善及び(再)成長を支援します。
REVICは、熊本地震で被災された事業者の事業再生及び九州広域の復旧・復興を支援するため、2つのファンドを設立しました。両ファンドからの必要資金の提供や人的支援等を通じて、被災地域の早期の復興・再生を支援します。また、東日本大震災における被災地域の復興・成長ファンドへは、LP出資を行っています。
高齢化社会の進展とともに、医療・ヘルスケアサービスの需要も年々増加の一途を辿っています。REVICは、地域包括ケアの成立と医療・ヘルスケア産業の振興を主目的として、今後成長期を迎える事業者を、成長資金の供給と役員派遣・経営支援の両面で伴走し、成長を力強く牽引します。
ベンチャー企業の誕生や成長余地のある企業の存在は、地域経済に大きな活力を与えます。REVICはこうした「未来の企業」を支えるファンドを各地域で運営し、成長に向けた経営支援を実施します。
出所:REVICのHP

地域活性化ファンドに限らず政府系ファンドはファンドとしての運用リターンだけではなく、それぞれのファンドとして持っているミッションを重視する。したがってこれらの政府系ファンドを利用する企業の立場からすると、それらのミッションに合致する企業であれば、ファンドからの出資・支援を受け入れられやすいというメリットがある。また多くの場合、地方銀行が出資しており、特に地方企業にとっては、民間のプライベート・エクイティ・ファンドに比べて地方銀行と政府が関与しているという「安心感」もあり、利用ニーズは高いのであろう。

一方で経営不振あるいはベンチャー企業などの資金に窮した企業が、単に融資に変わる資金融通手段として利用する可能性がある。これでは地域経済の活性化に逆行しかねない。地域活性化ファンドがその目的を達成していくためには、単なるリスク資金の提供にとどまらず、事業育成・再生の支援や、大手企業への統合など真に地域活性化に寄与するような出口戦略までハンズオンで取り組んでいくことが必要であろう。

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