パイオニアへの出資ーベアリングPEのストラクチャリングに対する柔軟性

サマリー
  • パイオニアは上場維持したままでベアリングPEから出資を受け入れる予定である
  • ベアリングPEの案件ストラクチャーに対する柔軟な姿勢が現れている

2018年9月12日、パイオニア株式会社(以下、「パイオニア」)はベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(以下、「ベアリングPE」)との間で、スポンサー支援に関する基本合意書(以下、「本合意書」)を締結したと発表した。本合意書では、ベアリングPEが総額500−600億円を目処に出資し、パイオニアの早期の経営健全化と中長期な成長実現に向けて共同で取り組むことに合意しているという。また本合意書の締結と合わせて総額250億円の融資を9月18日に実行することも合意している。

上場維持を前提とした出資、基本合意と合わせて融資を実行といったストラクチャリングにベアリングPEのストラクチャリングに関する柔軟性の高さが現れているといえる。ベアリングPEは1997年に設立されたプライベート・エクイティでこれまで総額160億ドル(約1兆8,000億円)の投資を97社に投資している。2006年から日本にも拠点を有し、過去7社に投資している。過去の投資は以下の記事を参考にされたい。

元USJ森岡氏の刀と戦略的パートナーシップを有するベアリングPEー全投資先リスト

基本的に未上場化を前提として上場維持したままの投資は行わないPEファンドも多い中で、ベアリングPEは上場企業であるジョイフル本田の株式の約3割をそのまま買い受けるなど以前からストラクチャリングには柔軟な姿勢を見せていた。

ただ本件の難しさはストラクチャリング以上に、足元の事業構造改革と中長期的な成長の方向性をつけていくことであろう。どちらも相応の難しさがある上に、上場維持ゆえに短期的な業績などにも気を配る必要がある。このようなリストラ+再成長という状況を避けるPEファンドも多く、本件はベアリングPEのリスクテイクに対する姿勢を表している。

以下の日本経済新聞の記事によると自動運転の領域での再成長を狙っているという。本件は成功は間違いなくプライベート・エクイティの存在意義を日本の産業界に示すものになる。パイオニアが自動運転の分野でのメジャープレイヤーとなることを強く期待したい。

ベアリング日本代表「パイオニア、自動運転に価値」  :日本経済新聞
 アジアで企業投資を展開する投資ファンド、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアは12日、パイオニアに250億円の融資を決め、500億~600億円を出資する意向を示した。日本拠点の代表を務めるシ
基本合意書概要
第三者割当による資金提供
  • 総額約500−600億円を目処
  • 普通株式または転換型優先株式
経営に関する基本方針
  • グループ経営:パイオニアの自主的で機動的な経営を尊重
  • 上場の維持:第三者割当増資実施後も当面普通株式の上場を維持
  • 称号・ブランドの維持・尊重:特段の事情がない限り変更しない
  • 取引関係の維持・継続:特段の事情がない限り変更しない
  • 第三者との提携へのサポート:第三者との提携をサポート
日程
  • 契約締結:2018年10月末
  • 第三者割当の払込:2018年12月末
ブリッジローン概要
条件
  • 約250億円
  • 第三者割当増資後に資金の一部は返済
出所:パイオニアリリース

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