なぜエンデバー・ユナイテッドはピザハット事業を買収したのか?

 

5月10日、日本KFCはピザハット事業をPEファンドのエンデバー・ユナイテッドに売却することを発表した。当社はピザ市場の競争激化を売却の理由としている。

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ピザハット事業においては、店舗収益モデルの最適化、事業規模と本社経費バランスの見直 し、売上予測精度向上による最適な店舗開発を基本戦略として事業を展開してまいりましたが、 ピザ市場における競争は一層激化しており、今まで以上に環境変化への迅速な対応と競争力の 強化に向けた取組みが求められております。 (日本KFC社プレスリリースより)

宅配ビザではないがFC含めて70店舗以上展開していたピザチェーンの「NAPOLI」が最近倒産しており、広義のピザ市場の競争は激化していることは想像に難くない。

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売主である日本KFCがそのような見方をしている状況で、なぜエンデバー社はピザハット事業を買収したのだろうか?その点について考えてみたい。

過去数年、日本KFCはピザハット事業の収益性を改善してきた。2015年3月期には14億円を超える営業赤字だったのに対して、2017年3月には当該事業を黒字転換することに成功した。リリースにある通り店舗収益モデルの最適化や本部コストの削減などに加えて、不採算の直営店舗などをFC店舗に変換するなどの取り組みを行い、その成果が出始めていた。

ピザハット事業の業績及びKPI推移
(百万円) 2015年3月 2016年3月 2017年3月
売上高 15,525 15,425 14,992
営業利益 -1,417 -351 153
直営店舗 162 159 155
FC店舗 206 209 215
合計 368 368 370
出所:日本KFC会社資料

ここまでは新たな投資を伴わずに主にコスト削減により、事業構造の変革をすることができた。しかし投資を伴わない変革には限界がある。今後更にピザハット事業を変革し、魅力ある事業にするためには、店舗設備の刷新やブランディングのための広告宣伝費等の積極的な投資が必要になる局面になりつつあったものと思われる。

そこで日本KFCは1)積極投資を行い事業価値を高めるか、2)何もせずに縮小均衡の事業を継続するか、3)事業を売却するか、という選択肢を検討することになったと想定される。

日本KFCは様々な検討を経てピザハット事業をノンコア事業として位置づけたのであろう。(あくまで推察だが、持分法親会社の三菱商事にとってチキンのバリューチェーンは非常に重要だが、ピザには三菱商事として思い入れがないこともこの判断に影響していると思われる。)その結果、1)の積極投資は株主などのステークホルダーに説明がつかなくなる。2)の何もしないのは事業価値を毀損する可能性が高く経済合理性がない。加えてピザハット事業に従事する従業員・経営陣にとっても新規投資できない縮小均衡のノンコア事業に従事することはモチベーションが高まらない。そこで3)の売却の選択肢をとることになったのであろう。

エンデバーはこの事業を買収した後は単なるコスト削減よりも、積極的な投資を行い、事業を成長軌道に載せることを企図しているものと思われる。具体的な施策はまだ不明ではあるが、過去の類似事例としてはベインキャピタルによるドミノ・ピザの買収がある。ベインキャピタルは買収後に自社アプリを投入するなど様々なマーケティング施策を実施し、ドミノ・ピザの事業価値を向上することに成功した。
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またロングリーチは2016年に米ウェンディーズと組み、サントリーからファーストキッチンを買収している。ファーストフード以外でも外食はプライベート・エクイティ・ファンドの投資が多く見られる分野であり、殆どのケースで企業価値を向上することに成功している。

今後のピザハットがどのような施策を実施するのか楽しみである。PEファンドによる新たな外食産業での成功事例となることを期待している。

余談であるが、本件は売却価格を開示していない。2016年3月期のピザハット事業のEBITDAは363百万円程度と推定される(セグメント開示の営業利益+減価償却費)。足元EBITDAが回復傾向にあるので今期予想はこれを上回る400百万円以上のEBITDAを計画として提示している可能性が高い。仮にEBITDAの8倍ぐらいの価格だとすると30-40奥円程度の買収価格ではなかろうか?今後の日本KFCの開示でより精度の高い予測が可能になるだろう。

PEO編集部

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