日本創生投資によるエヌ・ケイ・クリエイトの事業譲受ーなぜコールセンター案件が多い?

株式会社日本創生投資(本社:東京都千代田区、代表取締役 三戸政和)は、投資第五号案件として、株式会社エヌ・ケイ・クリエイト(本社:大阪府大阪市、以降NKC)の事業譲受を完了し、投資後支援(ハンズオン支援)を進めていくこと発表した。 エヌ・ケイ・クリエイトは、テレマーケティングを軸とした生命保険代理店事業やクライアント企業への派遣事業を行っている。

株式会社日本創生投資は中小企業向けの事業承継・事業再生投資を専門とするバイアウト主体のプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)である。企業価値1−30億円の企業を投資対象としているという。代表の三戸氏はソフトバンク・インベストメント出身で様々なメディアに寄稿(例:現代ビジネス)している。

「地方創生」「中小企業」「事業承継・事業再生」をキーワードに設立された日本創生投資は、ベンチャーキャピタルやバイアウトファンド出身のメンバーで構成された投資ファンドで、これらのバックグラウンドを踏まえ、投資先の経営効率化に加え、売上拡大の支援も目指すハイブリッドファンドを目指します。(出所:リリース

本件投資の対象であるNKCが従事する所謂アウトバウンドコールセンター・営業代行業は過去多くのPEファンドが投資対象としている。大型案件ではベインキャピタルによるコールセンター最大手ベルシステム24買収(2009年)や米大手PEファンドのKKRがインテリジェンスをUSENから買収(2010年)などがあり、それ以外にもアドバンテッジパートナーズ(以降、AP)によるカスタマーリレーションテレマーケティング(以降、CRTM)(2014年)などの中堅規模の案件もある。また生命保険のアウトバウンドコールセンターとして、J−STARが2015年に投資した日本保険サービスは本件対象に近い案件である。

なぜPEファンドによるコールセンター・営業代行の買収案件が多いのだろうか?これは売り手である企業側及び買い手であるPEファンド側双方に背景があると考える。

まず売り手側をみると、それなりの規模、例えばEBITDA(償却前営業利益)が5億円を超えているコールセンター・営業代行の企業は多く、かつ売却されやすい。例えばAPが投資したCRTMは創業者の西本氏が2007年に創業して2014年にAPに売却している。設備投資負担は軽く創業しやすく、かつ企業によるアウトソーシング化という大きな流れで受託を増やしやすい。一方で大企業は自社の昨日として抱えていたコールセンターを売却する動きもある。PEファンドによる買収ではないが2017年にはベネッセは子会社のコールセンター事業をセコムに売却している。

買い手側であるPEファンドからみると、コールセンター・営業代行の会社は、前述の通りアウトソーシング化の流れから成長が期待される上に、設備投資が少なくキャッシュ効率が高い、そしてエグジットが読みやすいこともある。大手から中堅・中小まで異なるコールセンター・営業代行のプレイヤーが存在しており、それら業界他社からの買収やPEファンドによる買収、更にはベルシステム24のようにIPOまで視野にいれることができる。

また本件の別の特徴としては、事業承継に狙いを定めたスモールバイアウトの案件であるということであろう。過去の記事「事業承継によるPEファンドの役割」にも書いたとおり、PEファンドは事業承継の受け皿となりうる。特にスモールバイアウトを手がけるファンドはその傾向が強い。今後もこのような形でPEファンドによる事業承継案件のスモールバイアウトは増加していくであろう。

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